今日5月18日は南方熊楠の誕生日

南方熊楠
南方熊楠顕彰館/南方熊楠邸(和歌山県田辺市)

今日は南方熊楠の155回目の誕生日。
熊楠は1867年5月18日(江戸時代最後の年である慶応3年の4月15日)に紀州和歌山城下に生まれました。

5月18日は現在奇しくも「国際博物館の日」であり、「国際植物の日―世界のみんなで植物のたいせつさを考える日―」でもあります。

また熊楠が後半生を過ごした和歌山県田辺市にある着地型旅行会社・田辺市熊野ツーリズムビューローさんが法人格を取得して一般社団法人になった日でもあります。

「国際博物館の日」は1977年に制定され、「国際植物の日―世界のみんなで植物のたいせつさを考える日―」は2012年に制定されました。田辺市熊野ツーリズムビューローさんは2010年に法人格を取得しました。

どれも熊楠の誕生日にふさわしい記念日です。もちろん偶然なのでしょうが、なんという素敵な偶然かと驚かされます。

今日、南方熊楠顕彰館/南方熊楠邸では生誕記念イベントを行います。

南方熊楠生誕記念イベント
・普段は公開していない南方熊楠邸内部を公開!(10時~12時)
・先着30名様にオリジナルグッズを抽選でプレゼント!

ギンリョウソウの種子散布

ギンリョウソウ

ギンリョウソウ(水晶蘭)について書かれた南方熊楠の文章のなかに、その種子について触れた箇所があります。

…多くの蘭類やこの水晶蘭などは、なかなか拾好な菌類と連合して、それに養われるという幸運な目にちょっと逢い難いから、なるべく多く種子を生んで一つでも旨く物になるを庶幾(しょき:心から願うこと)する。したがって蘭や水晶蘭の種子は、他の近類の種子に比して、その数はるかに多く、またなるべく諸方へ撒き布(し)くべきために身軽くできおる。

南方熊楠「周参見から贈られた植物について

ギンリョウソウはツツジ科の無葉緑植物。ベニタケ属の菌類に寄生します。
「拾好な菌類と連合して、それに養われる」ために種子を「なるべく諸方へ撒き布く」。そのためにギンリョウソウはどのような方法を取っているのか、熊楠の時代にはわかっていませんでしたが、近年の研究でその方法が明らかにされました。

“ゴキブリ”にタネまきしてもらう植物「ギンリョウソウ」 | academist Journal

光合成をやめた植物3種の種子の運び手をカマドウマと特定 ―風も鳥も哺乳類も手助けしない植物の種まき方法― | Research at Kobe

ギンリョウソウの種子はゴキブリやカマドウマに食べられて散布されます。

植物は風や水や動物を利用して種子を散布しています。動物を種子散布に利用する植物は動物に果肉を食べさせて種子を糞と共に排出してもらうという方法で種子を散布しています。種子の運び手は主に鳥類と哺乳類です。

昆虫に食べられて種子を散布するという方法はこれまでほとんど知られていませんでした。

ギンリョウソウは見た目もユニークですが、その生態もユニークです。

第32回南方熊楠賞授賞、江原絢子氏の記念講演

南方熊楠賞授賞式

南方熊楠賞授賞式が昨日5月14日開催されました。私はスタッフとして参加しました。

第32回の今回の授賞者は料理学者、食文化史が専門の江原絢子氏。受賞おめでとうございます。

江原氏は日本における食物史を開拓し、和食文化を学術領域として確立することに貢献しました。その研究は「和食」がユネスコの無形文化遺産 に登録された際の基礎資料にもなりました。

南方熊楠賞
南方熊楠賞

記念講演をお聞きして面白いと思ったこと

  • 水で洗ってそのまま食べる。世界的にはユニークな料理。ほうれん草のおひたし、ざるそば、お刺身など。水が豊かできれいな地域だからできる料理。
  • 江戸時代の料理は簡単。
  • 江戸時代の料理には砂糖はほとんど使われなかった。
  • 菓子にはたくさんの砂糖が使われた。

紹介された面白そうな江戸時代の料理本

江戸時代初期に刊行された和歌のかたちで書かれた食材の事典。

江戸時代初期に刊行された日本初の本格的料理書。

江戸時代前期の医師で本草学者の人見必大(ひとみひつだい)によって著された日本の食物全般について性質や食法などを詳しく説明する食材の百科事典。

江戸時代中期に刊行されたベストセラー豆腐料理本『豆腐百珍』。リンクは『豆腐百珍』に記載された豆腐料理100品すべてを現代に再現したレシピ本。

江原氏の学問は、近世や近代の料理を文献から再現することと、現在の郷土料理等を現地調査することが2つの柱になっているようです。これは熊楠の学問のあり方に通じるものがあります。また新たな学術領域の確立に貢献したことも熊楠を思わせます。

江原絢子氏のご著書

江戸時代の20の料理書から77のメニューをわかりやすく再現!
桜飯、大豆飯、利休飯、こしょう飯、須弥山汁、すり流し豆腐、ズズヘイいも、大根ずし、蒸し羊羹、ごぼう餅、うずら焼き、すすり団子、はす餅、けんぴん、かすてらいも、など。

和食の歴史と変化を学べる和食の教科書。

「日本食」が形成され変化する過程を描く。