南方熊楠は神社の森をアサイラムだと言いました。
ハガキにて申し上げしホルトノキ、ミズキ、クマノミズキ、オガタマノキ、カラスノサンショウの大木、一、二丈のもの、自生のタラヨウ一丈余のものなどは、何の用もなきものゆえ、わずかに神社の森を asylum(アサイラム)として今日まで生を聊せしなり。
南方熊楠『南方二書』
いよいよわが国の神社は、これ本来の公園に神聖慰民の具をそなえたる結構至極の設備と思い、外国人が毎々羨む通り、さしたる多額を費やさずに、村々大字小字に相応の公園あり、寺院あり、加うるに科学上の諸珍物を生存せるアサイラムとして保存されたきことなり。
南方熊楠『南方二書』
英語でアサイラム、ドイツ語やフランス語でアジール。
避難所。世俗の権力の及ばない領域、聖域、自由領域、無縁所。
人間の活動により生存を脅かされた生物は神社の森を避難所として今日まで生きてきた。神社の森は生物の避難所として保存しなければならないのだ。熊楠はそう訴えました。