南方熊楠顕彰館で企画展「十二支考<鼠>談義」開催中、講演会は1/5開催

来年は子年。南方熊楠顕彰館では年末年始恒例の企画展「新春吉例『十二支考』輪読 十二支考<鼠>談義」が開催中です。

子年生まれの展示担当者による講演会は1月5日(日)に開催されます。

熊楠をもっと知ろう!シリーズ第46回 「十二支考<鼠>談義」
講師:土永 知子(南方熊楠顕彰会学術部委員)
   一條 宣好(敷島書房店主)
   ゴウランガ チャラン プラダン(国際日本文化研究センター研究員)
   伊藤 慎吾(国際日本文化研究センター客員准教授)
日時:2020年1月5日(日)14時~
会場:南方熊楠顕彰館 学習室
定員:60名

申込不要、聴講無料です。興味のある方はぜひどうぞ!

「十二支考」は干支の動物について古今東西の説話などを縦横無尽に引きながら語る論考。「鼠に関する民俗と信念」は下巻に収録されています。

南方熊楠邸
 南方熊楠顕彰館から眺める南方熊楠邸

南方熊楠顕彰館は南方熊楠邸に遺された蔵書・資料を恒久的に保存し、熊楠に関する研究を推進し、その成果の活用を図り、熊楠について顕彰するための施設。

南方熊楠顕彰館
南方熊楠顕彰館 常設展示コーナー

11月30日はゲゲゲ忌

猫楠Tシャツ

11月30日はゲゲゲ忌。水木しげるさんの命日。
2015年11月30日に水木しげるさんは亡くなりました。

水木しげるさんのマンガで私が好きなのは『猫楠 南方熊楠の生涯』。

熊楠の生涯が忠実に描かれています。
幽霊や妖怪が登場しますが、猫や幽霊や妖怪とのやりとりにまったく違和感がないのが熊楠の凄いところです。

水木しげる『猫楠 南方熊楠の生涯』
水木しげる『猫楠 南方熊楠の生涯』

熊楠の生涯を描いたマンガでは間違いなく、この作品が最高傑作です。

南方熊楠が昭和天皇へのご進講でお見せした標本

昭和天皇へのご進講の際に標本箱を入れて献上したキャラメル箱のレプリカ
南方熊楠顕彰館所蔵

今から90年前の昭和4年(1929年)6月1日に南方熊楠が昭和天皇にご進講(天皇や貴人の前で学問の講義をすること)をしました。

熊楠は標本等をお見せして、その説明を行いました。日本における変形菌研究の先駆者として知られた熊楠ですが、用意した標本は変形菌だけではありませんでした。

まず最初にお見せしたのがウガの標本でした。尾にコスジエボシが複数くっついたセグロウミヘビ。

2番目にお見せしたのが、熊楠がキューバで発見した新種の地衣類、ギアレクタ・クバーナ(Gyalecta cubana)の標本。地衣類は木の幹や岩の上などに生え、一見コケ植物のようにも見える生き物ですが、コケ植物ではありません。菌類と藻類という異なる種の生き物がくっついた共生生物が地衣類です。

キュバにて小生が発見せし地衣に、仏国のニイランデーがギアレクタ・クバナと命名せしものあり。これ東洋人が白人領地内において最初の植物発見なり。

「履歴書」『南方熊楠全集』七巻、平凡社

3番目にお見せしたのが、海岸の洞窟に棲息するクモの標本。
4番目は、オカヤドカリという陸上で生活するヤドカリの標本。
5番目は、熊楠が二十代前半、アメリカにいたときにウィリアム・カルキンスという植物学者から贈られた菌類や地衣類の標本をまとめた冊子。熊楠自身が採集した標本も付け加えられています。
6番目は、ご進講の前年の秋から八十日程かけて和歌山県日高川町の山にこもって採集した菌類の図譜320種。

そして最後にお見せしたのが、変形菌の標本110点でした。

ご進講の時間は25分と決められていましたが、延長を求められ、5分ほど時間を超過して講義が行われました。その延長時間のなかで熊楠は、神島に生える彎珠(わんじゅ)の保護などについて語ったそうです。

講義するに当たって導入部がとても大切だと思いますが、熊楠は最初にウガをお見せし、次に地衣類をお見せしました。

ウガはセグロウミヘビとコスジエボシがくっついた生き物であり、地衣類は藻類と菌類がくっついた生き物です。異なる2つのものがくっついたような存在を熊楠は重要視しており、お見せしたいと考えたのかもしれません。

最後にお見せした変形菌にしてもアメーバとキノコという異なる種の生き物がくっついたかのように思える生き物です。

熊楠の学問も生物学や民俗学、文学など異なる学問をくっつけるかのような、異なる学問の領域を行き来するものであり、そのような存在のあり方を熊楠は好んだように思われます。