ギンリョウソウ(水晶蘭)について書かれた南方熊楠の文章のなかに、その種子について触れた箇所があります。
…多くの蘭類やこの水晶蘭などは、なかなか拾好な菌類と連合して、それに養われるという幸運な目にちょっと逢い難いから、なるべく多く種子を生んで一つでも旨く物になるを庶幾(しょき:心から願うこと)する。したがって蘭や水晶蘭の種子は、他の近類の種子に比して、その数はるかに多く、またなるべく諸方へ撒き布(し)くべきために身軽くできおる。
南方熊楠「周参見から贈られた植物について」
ギンリョウソウはツツジ科の無葉緑植物。ベニタケ属の菌類に寄生します。
「拾好な菌類と連合して、それに養われる」ために種子を「なるべく諸方へ撒き布く」。そのためにギンリョウソウはどのような方法を取っているのか、熊楠の時代にはわかっていませんでしたが、近年の研究でその方法が明らかにされました。
“ゴキブリ”にタネまきしてもらう植物「ギンリョウソウ」 | academist Journal
光合成をやめた植物3種の種子の運び手をカマドウマと特定 ―風も鳥も哺乳類も手助けしない植物の種まき方法― | Research at Kobe
ギンリョウソウの種子はゴキブリやカマドウマに食べられて散布されます。
植物は風や水や動物を利用して種子を散布しています。動物を種子散布に利用する植物は動物に果肉を食べさせて種子を糞と共に排出してもらうという方法で種子を散布しています。種子の運び手は主に鳥類と哺乳類です。
昆虫に食べられて種子を散布するという方法はこれまでほとんど知られていませんでした。
ギンリョウソウは見た目もユニークですが、その生態もユニークです。
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