今日5月18日は南方熊楠の誕生日。
熊楠は1867年5月18日(江戸時代最後の年である慶応3年の4月15日)に紀州和歌山城下に生まれました。
5月18日は現在奇しくも「国際博物館の日」であり、「国際植物の日―世界のみんなで植物のたいせつさを考える日―」でもあります。
「国際博物館の日」は1977年に制定され、「国際植物の日―世界のみんなで植物のたいせつさを考える日―」は2012年に制定されました。
どちらも熊楠の誕生日にふさわしい記念日です。もちろん偶然なのでしょうが、なんという素敵な偶然かと驚かされます。しかもそれらが日本国内の記念日ではなく国際的な記念日だというのも熊楠らしいところです。
また5月18日は田辺市熊野ツーリズムビューローさんが法人格を取得して一般社団法人になった日でもあったかと思います。
田辺市熊野ツーリズムビューローさんは熊野地方を「世界に開かれた質の高い持続可能な観光地」にすることを目指して活動している着地型旅行会社です。
田辺市熊野ツーリズムビューローさんが目指す「世界に開かれた質の高い持続可能な観光地」は、熊楠が夢見た地域の未来でもあります。
田辺でも、「働いて儲けよ」と教えて居るが、ここらで働いてナニが儲かるか朝から晩まで働いてもナニほどの儲けもない。先ず働いて儲かって居るのは監獄位のものだ。商売は同商売が多く工業も盛んでなく、今の所格別これぞという儲口もあるまい。ただこの「風景」ばかりは田辺が第一だ。田辺人たるものはこの風景を利用して土地の繁栄を計る工夫をするがよい。今こそかように寂しいが追々交通が便利になって見よ、必ずこの風景と空気が第一等の金儲けの種になるのだ。
「菌類学より見たる田辺及台場公園保存論 (七)」『牟婁新報』大正5年7月14日付
熊楠が夢見たのは、地域にある自然や文化的な資産を保全しながら観光資源として活用して地域経済を潤す、持続可能な観光地づくりでした。観光を柱として地域づくりをすれば、田辺の町は豊かな町となると熊楠は考えました。
……この景色や空気で儲ける策を立てるがよい。行々必ず俺の言う通りになってくるのだ。およそ世の中には、入りもせぬものに入用なものがあり、入用なものに無用なものがある。一時の出金を吝んで将来に入用なものを無用視するは浅慮の至りだ。
前同
この熊楠の訴えから90年の後、田辺市では2006年に田辺市熊野ツーリズムビューローさんが任意団体として設立され、その後2010年5月18日に法人格を取得して一般社団法人になりました。
熊楠の夢の実現を目指す団体が法人になった日が熊楠の誕生日であるというのも偶然のことなのでしょうが、なんという素敵な偶然かと思います。
心置きなく旅を楽しめる日々が戻ってきますように。
2020年以降に出版された熊楠関連の本。↓