第26回南方熊楠賞受賞の中沢新一先生のご著書から、熊楠や熊野について語られている文章を改めて確認しています。
1996年発行の『純粋な自然の贈与』には「すばらしい日本捕鯨」という文章が収められています。
「すばらしい日本捕鯨」では、太地の捕鯨について語られます。
その思想の飛躍は、熊野の太地でおこった。せっかく発達したまま、無用のものとなりつつあった海の戦争技術は、捕鯨の技として、新しく生まれ変わったのだ。
(中沢新一『純粋な自然の贈与』せりか書房、43頁)
日本で発達した「勇魚」捕りの技の優美さは、ここから発生している。日本の漁師たちは、大きな鯨をしとめるためには、より大きな銛が必要であるとか、大きな銛を打ち込むための火器を利用した新しい武器が必要だ、などという欧米捕鯨的ながさつな技術思考に、頼ることがなかったのである。
(中沢新一『純粋な自然の贈与』せりか書房、45頁)
文庫化しています。
太地の捕鯨についての『紀伊続風土記』での解説はこちら。
鯨漁(太地村):紀伊続風土記(現代語訳)