先日の日本オオカミ協会紀州吉野支部の講演会の会場で購入した本。
頂点捕食者のいない生態系はいびつです。熊野でもここ7〜8年くらいで急速に自然の破壊が進んできました。増えすぎたシカのために森が再生できなくなってきています。生き残るのは有毒な植物くらい。ひじょうに怖い状況です。
オオカミの再導入ってアメリカやヨーロッパだからできたことで、日本ではどうなんだろうという不安も少しはあったのですが、イエローストーン国立公園公認ガイドのスティーブ・ブラウンさんの講演を聴いて、逆にアメリカでできたのだから日本でできないはずがないと思うようになりました。
イエローストーン周辺地域でのオオカミによる経済効果は年間約30億円だそうです。
大切なのは教育と価値観づくり。
熊野のオオカミについての南方熊楠の記録。熊楠の頃にはオオカミは日本ではすでに絶滅していたかもしれませんが、伝承を伝える人たちはまだ生きていました。
西牟婁郡二川村五村などで、狩人の山詞に、狼をお客さま、また山の神、兎を神子供と言う。狼が罠に捕らわれると、殺すどころではなく助けて去らせる。
南方熊楠「紀州州俗伝」(口語訳)
その他種々聞いたことどもから推測すると、紀州の山神に猿と狼とがあり、猿神は森林、狼神は狩猟を司ると信じたらしく、オコゼ魚を好むのは狼身の山神、自瀆を見るのを好むのは猿身の山神に限るらしい。
南方熊楠「山の神に就いて」(口語訳)
オオカミと共生する人間社会に再び戻していくべき時が来たのではないかと思います。
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