本日10月30日は初恋の日。
島崎藤村の「初恋」という詩が明治29年(1896年)の10月30日に発表されたことに因んで、長野県小諸市の温泉旅館・中棚荘(なかだなそう)が記念日登録しました。島崎藤村は英語教師として小諸で過ごしたときに中棚荘に足繁く通ったそうです。
まだあげ初めし前髪の
島崎藤村「初恋」
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり
わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな
林檎畑の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ
初恋の詩というとこの島崎藤村の「初恋」が最も有名だと思いますが、私は熊野出身の文豪・佐藤春夫の「少年の日」も思い浮かびます。
1
佐藤春夫「少年の日」
野ゆき山ゆき海辺ゆき
真ひるの丘べ花を敷き
つぶら瞳の君ゆゑに
うれひは青し空よりも。
2
影おほき林をたどり
夢ふかきみ瞳を恋ひ
あたたかき真昼の丘べ
花を敷き、あはれ若き日。
3
君が瞳はつぶらにて
君が心は知りがたし。
君をはなれて唯ひとり
月夜の海に石を投ぐ。
4
君は夜な夜な毛糸編む
銀の編み棒に編む糸は
かぐろなる糸あかき糸
そのラムプ敷き誰(た)がものぞ。
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