招霊木(オガタマノキ)の花が花盛り。
オガタマノキは、神道に古く因縁深い木であるが、九州に自生している箇所があるというが、その他に大木あるのは紀州の社地だけである。合祀のため著しく減じた。
(南方熊楠「神社合祀に関する意見」、私による口語訳)
本月23日の本紙(『牟婁新報』)に、七川平井にオガタマの木があり、古え安倍晴明がこの村にとどまったとき、手植えした物ということが見える。このオガタマの木は、本邦南部諸国に産し、紀州では竜神辺に自生がある、というのが故伊藤圭介先生の説である。予が知るところでは、当郡瀬戸の藤九郎神社に1〜2丈の大木が数本あり、また25年前、日高郡和田浦の神社に1本あるのを見た。まだ他にもあるだろう。葉は平滑、光沢があり、長楕円状、倒卵形、また倒披針形、長さ5〜6分、実叢長さ1〜2寸、ちょっと見たところ松かさのようで、赤い実が多くその中から露出し、美しい。
(南方熊楠「オガタマの木について」、私による口語訳)
東牟婁郡七川村平井という所の神林には晴明の手植えの異樹があり、誰もその名を知らず、枝を折って予に示すのを見るとオガタマノキだった。
(南方熊楠「紀州俗伝」、私による口語訳)