本日2月22日は「にゃん、にゃん、にゃん」で「猫の日」なので、『熊楠と猫』を。
南方熊楠は猫好きであったようです。熊楠の猫エピソードでよく紹介されるのがアメリカ時代の出来事。
小生二十二、三のとき、米国ミシガン州アナバという小市の郊外三、四マイルの深林に採集中、大吹雪となり走り帰るうち、生まれて一月にならぬ子猫が道を失い、雪中を小生に随い走る。小生ちょうど国元の妹の訃に接せし数日後で、仏家の転生のことなど思い、もし妹がこの猫に生まれあったら棄つるに忍びずと、上衣のポケットに入れて走りしも、しばしばしばそれより出て走る。小さいものゆえ小生に追いつき能わず哀しみ鳴く。歩を停めて拾い上ぐ。幾度も幾度もポケットに入れしも、やがてまた落ち出る。
昭和8年1月28日付、岩田準一書簡『南方熊楠全集』第9巻、平凡社、172-173頁
妹の生まれ変わりかもしれないと思ったこの子猫を、熊楠は結局救えませんでした。
この書簡を書いたとき熊楠は60歳を過ぎていましたが、「今も惆恨致し候」と、救えなかったことを悔やんでいました。