2019年のノーベル経済学賞が日本時間の本日10月14日夕に発表されます。
かつてノーベル経済学賞に最も近い日本人と称されたのが2014年に亡くなられた宇沢弘文さんでした。人間の心を大事にする経済学を研究され、環境問題にも取り組まれた世界的な理論経済学者です。
…何とかして経済学が人間のための学問であるようにと願い、様々な努力をしてきました。…その過程で私は一つの大事なことに気がつきました。
それは、大切なものは決してお金に換えてはいけない、ということです。人間の生涯において大きな悲劇は、大切なものを権力に奪い取られてしまう、あるいは追い詰められてお金に換えなければならなくなることです。
宇沢弘文『人間の経済 』新潮新書、51頁
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宇沢氏が提唱した社会的共通資本の概念は、人類が今後も存続するためには重要な考え方になるのではないかと思います。
社会的共通資本 (Social Common Capital)
• ゆたかな経済生活を営み,すぐれた文化を展開し,人間的に魅力ある社会を持続的,安定的に維持することを可能にするような自然環境や社会的装置.
• 社会全体とっての共通の財産であり,それぞれの社会的共通資本にかかわる職業的専門化集団により,専門的知見と職業的倫理観にもとづき管理,運営される.
• 一人一人の人間的尊厳を守り,魂の自立を保ち,市民的自由を最大限に確保できるような社会を志向し,真の意味におけるリベラリズムの理念を具現化する。
社会的共通資本の類型
社会的共通資本の具体的形態:三つの類型*
(1) 自然環境 : 山,森林,川,湖沼,湿地帯,海洋,水,土壌,大気
(2) 社会的インフラストラクチャー : 道路,橋,鉄道,上・下水道,電力・ガス
(3) 制度資本 : 教育,医療,金融,司法,文化
*この分類は必ずしも網羅的ではなく排他的でもない
あくまで社会的共通資本の意味を明確にするため類型化
・ それぞれの社会的共通資本にかかわる職業的専門化集団により,専門的知見と職業的倫理観にもとづき管理,運営
宇沢弘文「社会的共通資本」(PDF)
明治末期に神社の森や地域の文化を守ろうとした南方熊楠も、まさにそのとき社会的共通資本を守ろうとしていたのだなと思います。
神社の森も決してお金に換えてはいけない大切なものでした。大切なものを権力に奪い取られてしまうことに、追い詰められてお金に換えなければならなくなることに熊楠は怒りを覚えました。
遅まきながら宇沢氏の著書を読んで、宇沢弘文氏にノーベル経済学賞を受賞してもらいたかったとつくづくと思います。
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