最近、日経新聞の土曜版「NIKKEIプラス1」の「何でもランキング」で「自然のマジック 訪ねたいフォトジェニックな奇岩10選」というのがこの間(2019年3月16日付の紙面で)発表されました。
訪ねたいフォトジェニックな奇岩、珍しい形をした岩。その第1位が、私が住む本宮町にある、ちちさまでした。
ちちさまは、乳の少ないお母さんが願いをかけると乳が出るようになると伝えられる岩。乳の神様、子育ての神様として願いがかけられるお母さんたちの祈りの場がちちさまでした。
有名な観光スポットではないので、たどり着けない方々もおられるようですので、ちちさまへの行き方を動画で紹介しました。ぜひご覧ください。
熊野本宮大社から音無川沿いの道を500mほど遡ったところに「ちごの谷」という谷があります。その谷を100mほど入っていくと、乳子大師(ちごだいし)と呼ばれる石仏があります。
その石仏の上の岩壁には2つの丸い石が並んでいます。それが「ちちさま」と呼ばれる岩で、人が加工して作ったものではなく、天然の岩です。
『紀伊続風土記』という江戸時代末期に紀州藩が作らせた紀伊国のガイドブックのような本があるのですけれども、その本の中の本宮村のページには、
○ちごら石
音無川の上の山中にある。縦4間横6間の石である。
真ん中に乳の形が2つある。
乳の少ない婦人が立願すれば自然に乳が出ると言い伝える。
(「本宮村:紀伊続風土記 現代語訳」より)
というようなことが書かれています。
ここはお母さんたちの祈りの場でした。
粉ミルクのない時代、乳が出る出ないはお母さんにとって深刻な問題で、乳が出ますようにという願いはたいへん切実なものであったと思います。
向かって右の丸石の直径はおよそ46cm、向かって左の直径はおよそ40cm。
ほぼ同じ大きさの整った丸石が女性の乳房のように2つ横に並んでいることは、奇跡的です。
女性の胸は右利きの方なら通常、左胸の方が大きいそうですが、ちちさまも向かって右の、左胸の方が大きくて、自然の造形の不思議を感じさせられます。
各地に「乳岩」などの名で呼ばれる岩はありますが、これほど見事な乳の岩は他にないのではと思われます。
地質学的には、ちちさまはノジュール。堆積岩の中に存在する周囲とは成分の異なった塊です。日本語で団塊と言います。「日本の奇岩百景+」に登録されています。
ぜひお参りいただけたらと思います。