『紀伊続風土記』物産第一の石部を1/3くらいまで現代語訳しました。
禹余糧(うよりょう)や太一余糧(たいいつよりょう)、卵石黄(らんせきおう)。これらは熊野でも産出されていたんですね。
この3種は南方熊楠が英文論考「The Eagle Stone(鷲石考)」のなかで鷲石として紹介している石です。
鷲石は、ヨーロッパで鷲が孵化を助けるために巣の中に持ち込むと信じられた中味が空洞の石。
中国の博物誌では、鷲石を3つの異なる種に分類している。「禹余糧」、「太一余糧」、「卵石黄」である。……「禹余糧」と「太一余糧」には、中国語で「石中黄」と呼ばれる黄色く濁った液体がもともと入っていて、この「石中黄」を3升飲むと1000年長生きすると言われている。……「禹余糧」と「太一余糧」は、それぞれ「禹の食べ残したもの」、「太一の食べ残したもの」という意味である。特定の人物が食べ残したものや飲み残したものがそのまま残り、化石となり、際限なく増え、または再生することにより永遠に存在する、あるいは無限に増殖するという俗信は、世界各地に広くみられる。
(『南方熊楠英文論考[ノーツ・アンド・クエリーズ]誌篇』集英社、539-540頁)
東洋では鷲とは結びつきませんでしたが、中味が空洞の石はやはり安産の霊物とされ、石の中にある砂土は薬とされました。
禹余糧、太一余糧、卵石黄。今でも熊野で見つかるのかな。