墓マイラーのマスト・ビジット

南方熊楠の墓

第26回南方熊楠賞授賞式の記念パーティーで、選考委員のひとり宗教学者の釈徹宗先生が「高山寺は墓マイラーにはマスト・ビジット」だとおっしゃっていました。

高山寺には南方熊楠のお墓があり、植芝盛平のお墓もあります。
どちらも熊野の霊性を強く感じさせるとてつもない大人物です。

南方熊楠と植芝盛平が同じときに田辺の町で暮していたというのもすごいことです。

高山寺のある場所はお寺が建つはるか以前から聖地であったのだろうと思われます。

高山寺の境内には縄文時代早期に営まれた貝塚があります。縄文時代、海は今よりも内陸に入り込んでいました。その頃、この高山寺のある場所は海に向かって突き出た岬の突端部であり、そこに貝塚が営まれました。

貝塚は現代人の感覚だとゴミ捨て場のように思えますが、そうではないだろうと想像します。

岬のような突き出た地形の突端部は神聖な場所とされます。熊野地方でも突き出た地形の突端部に神社が置かれているのをしばしば目にします。

神聖な場所をゴミ捨て場にするだろうかと思います。
狩猟採集により暮していた人々の心の中で、人間の食べ物になってくれる生き物の存在が非常に大きな部分を占めていたことでしょう。

人間に捕らわれて食べられた生き物が人間に恨みをいだきませんように。その魂が再び体を得てこの世に戻ってきますように。そして再び捕われて食べられてくれますように。貝殻や動物の骨は粗末に扱っていいものではなかったのだと思います。

貝塚は貝のお墓。貝の死をとむらい、再生を祈る場であったのであろうと私は想像します。

植芝盛平翁の墓

中沢新一先生の南方熊楠賞授賞記念講演

第26回南方熊楠賞受賞記念講演

昨日5月7日開催された第26回南方熊楠賞授賞式での中沢新一先生の記念講演「粘菌と華厳」、素晴らしかったです。

エコロジーも神話も、人間が、他の動植物とのつながりを結び、自然とのつながりを取り戻す、人間が自然の中で好き勝手にやらないようにするための知性の働き。

中沢先生の表現の仕方とは違うと思いますが、このようなことをおっしゃられていたように思います。

私は熊野に住み、熊野のことを知ることで、ナギという樹木とカラスという鳥に特別なつながりを感じるようになりましたが、そのような特定の動植物とのつながりをもつということが人間が地球の生命圏の中で生きていくうえで大切なことなのだなと思いました。

熊野がナギの葉ヤタガラスをシンボルにしていることには意味があるのだと思いました。

他にもいろいろ大切なことをお話くださいましたので、近日に発売される南方熊楠賞受賞記念出版の『熊楠の星の時間』をじっくり読みたいです。

熊楠の星の時間 (講談社選書メチエ)
熊楠の星の時間 (講談社選書メチエ)