梅原猛先生の本から。
嘘を言わない神、証誠殿の神、それが熊野本宮の神なのである。
梅原猛『日本の原郷 熊野』とんぼの本、新潮社、117頁
人類の歴史のなかで嘘は有力な武器として用いられてきましたが、熊野本宮の神は嘘を言わない神様でした。
嘘を言わないことは新型コロナウィルスの感染が世界的に拡大している今、とても重要なことです。
新型コロナウィルスの感染拡大に対して各国がそれぞれ自力だけで対処しきることはできないように思います。日本はマスクすら自力だけでは用意することができません。
終息に向けては国際的な情報の共有、対策の国際協調、国際協力が不可欠だろうと思います。
各国が互いに信頼関係を結ぶには最低限、嘘を言わないこと、情報を隠さないことが求められます。
新型コロナウィルスとは生命や健康を脅かされながらしばらく付き合っていかなければならないでしょうから、このようなときにこそ熊野の神が必要とされるのかもしれません。
…それは名前通り真実を保証する神なのである。…嘘を言わない、すなわち誠実であるということは縄文人の持っていた最大の美徳であったに違いない。
この信仰が後世、熊野誓紙となる。熊野の神は証誠の神なので、この熊野誓紙に誓約すれば、約束を破るとひどい刑罰を受けるというのである。
梅原猛『日本の原郷 熊野』とんぼの本、新潮社、116-117頁