嘘を言わない神

梅原猛先生の本から。

嘘を言わない神、証誠殿の神、それが熊野本宮の神なのである。

梅原猛『日本の原郷 熊野』とんぼの本、新潮社、117頁

人類の歴史のなかで嘘は有力な武器として用いられてきましたが、熊野本宮の神は嘘を言わない神様でした。

嘘を言わないことは新型コロナウィルスの感染が世界的に拡大している今、とても重要なことです。

新型コロナウィルスの感染拡大に対して各国がそれぞれ自力だけで対処しきることはできないように思います。日本はマスクすら自力だけでは用意することができません。

終息に向けては国際的な情報の共有、対策の国際協調、国際協力が不可欠だろうと思います。

各国が互いに信頼関係を結ぶには最低限、嘘を言わないこと、情報を隠さないことが求められます。

新型コロナウィルスとは生命や健康を脅かされながらしばらく付き合っていかなければならないでしょうから、このようなときにこそ熊野の神が必要とされるのかもしれません。

 …それは名前通り真実を保証する神なのである。…嘘を言わない、すなわち誠実であるということは縄文人の持っていた最大の美徳であったに違いない。

 この信仰が後世、熊野誓紙となる。熊野の神は証誠の神なので、この熊野誓紙に誓約すれば、約束を破るとひどい刑罰を受けるというのである。

梅原猛『日本の原郷 熊野』とんぼの本、新潮社、116-117頁

江戸時代末期のコレラ除け

江戸時代末期にコレラが大流行したときにはオオカミの骨がコレラ除けの呪具として用いられました。そのため多くのオオカミが捕殺され、ニホンオオカミ絶滅の一因となったとも考えられています。

1858年(安政5年)の流行は相次ぐ異国船来航と関係し、コレラは異国人がもたらした悪病であると信じられ、中部・関東では秩父の三峯神社や武蔵御嶽神社などニホンオオカミを眷属とし、憑き物落としの霊験を持つ眷属信仰が興隆した。眷属信仰の高まりは憑き物落としの呪具として用いられる狼遺骸の需要を高め、捕殺の増加はニホンオオカミ絶滅の一因になったとも考えられている。

コレラ – Wikipedia

頂点捕食者の絶滅は日本の森林生態系に荒廃をもたらしました。

間違った情報の共有で取り返しのつかないことが起こってしまうこともあり得ます。

気をつけなければ。

本日3月27日はさくらの日

今日3月27日は「さくらの日」なので、今日のおやつは桜餅。

さくらの日の今日、クマノザクラは花を散らせたものもありますが、まだ咲いているものもあります。そうしたなか他所から持ち込まれて植えられたソメイヨシノが花を咲かせています。

クマノザクラの保全にとって脅威となるのが、開花時期が重なる他所から持ち込まれた他の種のサクラです。

桜餅を包む桜の葉の塩漬けは主にオオシマザクラの葉が用いられますが、オオシマザクラは伊豆大島などに自生する野生種の桜です。もともと熊野地方にはないサクラでしたが、熊野地方に持ち込まれて植えられ、野生化したものも見られます。

オオシマザクラは開花時期が一部でクマノザクラと重なるので交雑の危険性があり、ソメイヨシノと同様にクマノザクラの保全にとっては脅威となります。

クマノザクラを保全するには、いつかどこかの段階で他の種のサクラを伐採する必要があるのでしょう。

下の本はクマノザクラの発見者・勝木俊雄(森林総合研究所多摩森林科学園チーム長)のご著書。クマノザクラについても触れています。