
先日、南方熊楠賞授賞式に南方熊楠顕彰会事業部委員として参加しました。
第35回となる今回の受賞者は魚類学がご専門で国立科学博物館名誉研究員の松浦啓一先生。
松浦先生の記念講演の中であった、脊椎動物(背骨のある動物)の多くは魚であってヒトも魚の一種であるというお話には感銘を受けました。どう話されていたのか正確には覚えていないので、松浦先生のご著書から引用します。
顎をもつ魚を含む脊椎動物は顎口(がくこう)動物と呼ばれている。顎口動物には、人類を含む哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、顎をもつ魚類が含まれる。両生類は顎をもつ魚から進化し、さらに爬虫類、鳥類、哺乳類の登場へとつながった。
松浦啓一『したたかな魚たち』角川新書
魚類以外は4本の足をもつので「四肢類」に分類されている(鳥の羽は前足である)。つまり、進化を考慮に入れると、我々人類を含む四肢動物は魚の子孫ということになり、分類上は魚類の中の一群ということになる。「えっ、人間は魚なの?」と思われるかもしれないが、系統分類学に厳格に従うと、ヒトは魚の1種ということになる。

私はヒトを魚の一種と考えたことはこれまで一度もありませんでしたが、ヒトも魚の一種であるという科学的知見は、ヒトの活動により生物の大量絶滅が進行中である現在、もっと広く知られるべきことだと思いました。
川や海に棲む魚もヒトの仲間だと多くの人々が思えるようになれば、ヒトの活動も変化していくことでしょう。