ヒトは魚の1種

第35回南方熊楠賞授賞式

先日、南方熊楠賞授賞式に南方熊楠顕彰会事業部委員として参加しました。

第35回となる今回の受賞者は魚類学がご専門で国立科学博物館名誉研究員の松浦啓一先生。

松浦先生の記念講演の中であった、脊椎動物(背骨のある動物)の多くは魚であってヒトも魚の一種であるというお話には感銘を受けました。どう話されていたのか正確には覚えていないので、松浦先生のご著書から引用します。

 顎をもつ魚を含む脊椎動物は顎口(がくこう)動物と呼ばれている。顎口動物には、人類を含む哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、顎をもつ魚類が含まれる。両生類は顎をもつ魚から進化し、さらに爬虫類、鳥類、哺乳類の登場へとつながった。
 魚類以外は4本の足をもつので「四肢類」に分類されている(鳥の羽は前足である)。つまり、進化を考慮に入れると、我々人類を含む四肢動物は魚の子孫ということになり、分類上は魚類の中の一群ということになる。「えっ、人間は魚なの?」と思われるかもしれないが、系統分類学に厳格に従うと、ヒトは魚の1種ということになる。

松浦啓一『したたかな魚たち』角川新書
松浦啓一『したたかな魚たち』角川新書

私はヒトを魚の一種と考えたことはこれまで一度もありませんでしたが、ヒトも魚の一種であるという科学的知見は、ヒトの活動により生物の大量絶滅が進行中である現在、もっと広く知られるべきことだと思いました。

川や海に棲む魚もヒトの仲間だと多くの人々が思えるようになれば、ヒトの活動も変化していくことでしょう。

3月27日、熊野本宮で「巻絹」!

巻絹

3月27日(木)、熊野本宮大社旧社地・大斎原で「巻絹」が奉納されます! 
「巻絹」は、熊野本宮の巫女が主役の能の演目です。本宮の巫女が神憑かりして神の言葉を語ります。

「巻絹」の現代語訳はこちら

「巻絹」で私が好きなのは、巫女が伝える熊野本宮の主神の言葉。

證誠殿は阿弥陀如来。十悪を導き、五逆をあわれむ。

謡曲「巻絹」

熊野本宮の主神の本体は阿弥陀如来である。
熊野本宮の主神は十悪(殺生・偸盗・邪淫・妄語・綺語・悪口・両舌・貪欲・瞋恚・邪見の十種類の悪行)を犯した者を導く。
また、阿弥陀如来が救済から除外するとした五逆(殺父・殺母・殺阿羅漢・破和合僧・出仏身血の五つの大罪)を犯した者さえも憐れむ。
あらゆる人々を熊野は救済するのだ、と熊野本宮の主神は巫女の口を通して宣言します。

3月27日(木)16時〜17時半、熊野本宮大社旧社地・大斎原にて。立ち見での観覧は無料(椅子席は法人・個人の協賛席となります)。雨天時は世界遺産熊野本宮館で。

「巻絹」奉納記念御朱印
「巻絹」奉納記念御朱印

熊野本宮大社で「巻絹」奉納記念の御朱印をいただきました。奉納当日の3月27日までの限定授与品です。1枚500円。

生物の大量絶滅

地球上の生物を重量(バイオマス量)で見ると、全生物の8割以上が植物です。

植物が全生物の82%を占め、次に多いのが細菌(バクテリア)で13%、その次が菌類の2%。植物、細菌、菌類で全生物の97%を占めると推定されます。動物は0.4%で、そのうち人間はわずかに0.01%です。

図録▽地球上のバイオマス分布

生物を種で見ると、全生物の6割が昆虫です。人間が知る生物の種は約170万種、そのうちの約100万種が昆虫。地球の生態系にとって大切なのは植物と昆虫です。

現在、全生物のわずかに0.01%しかないたった1種の人間の活動が生態系に崩壊の危機をもたらしています。人間の活動が原因で生物の大量絶滅が現在進行中であり、現在、1年に4万種の生物が絶滅していると考えられています。

1年に4万種の生物が絶滅というのはとてつもなく異常な事態です。100年前には1年に1種の生物が絶滅していたと考えられています。100年前と比べて現在は4万倍のペースで絶滅が進んでいます。

地球上ではこれまで何度か生物の大量絶滅が起きていますが、恐竜が絶滅したのももその大量絶滅のひとつです。

恐竜絶滅時には1000年に1種の生物が絶滅していたと考えられています。現在は恐竜絶滅時の4千万倍のペースで絶滅が進んでいるということです。