本年の田辺市文化賞は「いちいがしの会」の前会長の竹中清さま

昨日は田辺市文化賞贈呈式に、田辺市文化賞推薦委員会の委員長として出席しました。

本年の受賞者は、熊野の森の再生にご貢献された、「熊野の森ネットワーク いちいがしの会」の前の会長の竹中清さま。
「熊野の森ネットワーク いちいがしの会」は、戦後の拡大造林により熊野本来の森である照葉樹林が失われてしまった熊野の山に、熊野本来の森を取り戻そうと活動をされている団体です。
https://www.ichiigasi.jp/

熊野の森は、熊野の精神文化や信仰を育んだ土壌そのものでした。熊野本宮の神様は熊野川の中洲にできた森のイチイガシの梢に降臨しました。闘鶏神社の神様は社殿の裏の森に降臨しました。熊野には森そのものを御神体とする社殿のない神社も数多くありました。

「いちいがしの会」の活動は、熊野の自然の再生を目指すとともに、熊野の文化が育まれた土壌を取り戻す、極めて文化的な取り組みです。

委員長として閉会の挨拶をさせていただきましたが、とても緊張しました。

8月23日に第9回熊野本宮盆踊り大会を開催

熊野本宮盆踊り大会

8月23日に熊野本宮盆踊り大会を開催いたしました。おかげさまでたいへん盛り上がりました。

今回が12年目の、第9回目。一遍上人の命日である8月23日に開催できたのは久しぶりで、より感慨深い回となりました。

一遍上人は鎌倉時代に熊野本宮で悟りを開いたお坊さんです。

一遍上人は熊野本宮に籠り、夢の中で熊野本宮の神様から教えを授かって悟りを開きました。そして、これがきっかけとなって時衆(時宗)という仏教の一派が生まれました。

時衆が行った布教方法の一つに、踊念仏がありました。この踊念仏が盆踊りの原型だといわれます。

一遍上人が踊念仏について詠んだ和歌があります(「一遍上人語録」偈頌和歌 和歌16-17)。

はねばはね踊らばをどれ春駒の のりの道をばしる人ぞしる

(訳:跳ねたければ跳ねよ、踊りたければ踊れ。春の野を跳ね踊る馬のように。わかる人にはわかる。それこそが仏法の道なのだ)

ともはねよかくてもをどれ心ごま 弥陀の御法と聞くぞうれしき

(訳:ともかくも、跳ねよ、踊れよ。阿弥陀のみ教えを聞くのは嬉しいことだ。その嬉しさに心が馬のように跳ね躍る)

熊野本宮なしに時衆はなく、時衆がなければ踊念仏もなく、盆踊りもなかったかもしれません。だから熊野本宮で盆踊り大会を行うのです。

熊野本宮盆踊り大会
熊野本宮盆踊り大会

南方熊楠賞受賞記念講演、ヒトは魚の1種

第35回南方熊楠賞授賞式

先日、南方熊楠賞授賞式に南方熊楠顕彰会事業部委員として参加しました。

第35回となる今回の受賞者は魚類学がご専門で国立科学博物館名誉研究員の松浦啓一先生。

松浦先生の記念講演の中であった、脊椎動物(背骨のある動物)の多くは魚であってヒトも魚の一種であるというお話には感銘を受けました。どう話されていたのか正確には覚えていないので、松浦先生のご著書から引用します。

 顎をもつ魚を含む脊椎動物は顎口(がくこう)動物と呼ばれている。顎口動物には、人類を含む哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、顎をもつ魚類が含まれる。両生類は顎をもつ魚から進化し、さらに爬虫類、鳥類、哺乳類の登場へとつながった。
 魚類以外は4本の足をもつので「四肢類」に分類されている(鳥の羽は前足である)。つまり、進化を考慮に入れると、我々人類を含む四肢動物は魚の子孫ということになり、分類上は魚類の中の一群ということになる。「えっ、人間は魚なの?」と思われるかもしれないが、系統分類学に厳格に従うと、ヒトは魚の1種ということになる。

松浦啓一『したたかな魚たち』角川新書
松浦啓一『したたかな魚たち』角川新書

私はヒトを魚の一種と考えたことはこれまで一度もありませんでしたが、ヒトも魚の一種であるという科学的知見は、ヒトの活動により生物の大量絶滅が進行中である現在、もっと広く知られるべきことだと思いました。

川や海に棲む魚もヒトの仲間だと多くの人々が思えるようになれば、ヒトの活動も変化していくことでしょう。